夢− 第6夜 −

 扉の向こうは…風呂場だった。
 色とりどりのタイルで敷き詰められた床と、湯煙の向こうには大きな岩をくりぬいてつくられた風呂がある。まわりはあたかもジャングルの様にさまざまな南米の植物が植えられている。とにかく大きな風呂場だった。人は誰もいないようだ。龍の頭を型どった岩の、そのカッと開いた口から、まるで火を吐くようにお湯が吹き出している。湯気の向こうに人工の滝が見える。次の部屋に向かう扉はどこにもない。また間違ったか?

 まぁ、焦ってもしかたがない。そういえば、長い間風呂にも入っていないな。僕はしびの甲冑をはずし、上半身裸の状態になった…そのときである。いったいいつからそこにいたのだろうか?目の前には3人の男が立ちふさがっていた。一人の男がこう言った。

「ここは、王のみが入ることの許される岩風呂だ。奪うがいい」

 特に奪うほど風呂に入りたいわけではなかったが、とりあえずこの男達を倒さなければ先には進めないだろう。幸い僕にはしびの甲冑と剣が…無い(;_;)しびの剣は壷になってしまっていたし、甲冑はさっき脱いでしまった。殆ど丸腰の僕に比して、彼らはそれぞれ得意の武器を手にしている。

 一人目は中国人の風貌。両手にもつ武器はトンファー。弁髪の先には分銅がついていて、三つ編みの髪の毛が重そうだ。あれも武器なのだろう。もう一人は、中世の騎士の格好をしていた。全身を銀色の甲冑で包み、手には鉛の棍棒を持っている。なんで剣じゃないんだ?

 最後のひとりは…あれ?いない。たしか3人いたはずなのに?
「3人いなかったでしょうか?」
 と僕は弁髪の男に聞いた。
「ではいくぞ」会話が成立していない(;_;)

 中国人が、「キェェェ」という甲高い声をあげて、頭をぶんぶん振り回しながら僕に向かってくる。恐すぎる(T_T)僕はチューリップハットを脱いで、彼の攻撃を紙一重でかわし、すれ違いざまにそのチューリップハットをそいつにかぶせてやった。チューリップハットは一度被ると、脱いでも脱いでも頭に張り付いたままで、決して取れない。ピ等のつくった流れ星捕獲用のこの帽子に僕は助けられた。中国人は、必死にチューリップハットを脱ごうともがいていたが、頭をぶんぶん振り回しているうちに、とうとう自らの弁髪で自分の体をぐるぐる巻きにしてしまい、身動きがとれなくなってしまった。

「次はオレだ」
 甲冑の騎士は、そう言ったかと思うと、その鬼の金棒のような大きな棍棒を僕の頭に打ち下ろす。あんなので殴られたらひとたまりもない。しびの甲冑を身につけていれば、あれくらいの棍棒なら片腕で防ぐだけでダメージを跳ね返すのだが、今はセミヌード状態。もうだめか…?。鉛の棍棒が振り下ろされたとき、僕は体半分逃げるのがやっとだった。騎士の棍棒は僕の右腰のあたりに打ちつけられ、僕は激痛を…感じない?何故だ?

 腰のあたりをみると、しびの壷がその棍棒を受けとめていた。丁度壷のくぼみに棍棒の凸凹がひっかかって、騎士が押しても引いても棍棒はぴくりとも動かなかった。僕は、騎士が力任せに棍棒を引っ張った瞬間に馬酔木の蔓を腰からほどいた。

 しびの壷の中には、あの森で手に入れたMANEATERの液体が入っている。勢いあまってころんだ騎士の甲冑に、そのなんでも溶かしてしまうねばねばの液が飛び散った。無惨にも騎士はどろどろに溶けてしまい、跡形もなくなってしまった。

 これで2人倒した。さっき3人だと思ったのは気のせいか?ところで扉はどこだろう…
そう思いながらあたりを見回していると、いきなり背後から湯をかけられた。「しまった!」と思って振り向くと、そこには全身が透き通った水色の男(?)が立っていた。

 「私がここの本当の番人だ。私を倒したら扉のある場所を教えよう」
 まるで三流漫画だな(^_^;しかたない。こいつはどうやって倒そうか?水色の男は全裸だった。武器は手の甲から吹き出している水(お湯)らしい。なんか、一番弱そう。ちゃっちゃと倒してしまうか。…ところが、さすがに「本当の番人」というだけあって、こいつを倒すのは至難
の技だった。なにせ、体がまるで水でできているのかと思うくらい、殴っても蹴っても手応えがないのだ。男の攻撃はお湯をかけるだけなので全然僕のダメージも無かったが、次第に僕は疲れてしまった。へとへとになって、タイルの床に座り込んでいると、男が自慢げにこういった。
 「もう諦めたほうがいいのではないか?これくらいの事で参っていたら、とても王の間にはたどり着けない。私は岩風呂に帰るが、また戦いたくなったら、いつでも相手をしてやるぞ!」
 男は岩風呂に入ると、お湯に同化するかのように溶けてしまった。そうか、彼はここの風呂のお湯自身なんだ。お湯を相手に殴ろうが蹴ろうがなんらダメージを受けないのはあたりまえだ。どうすればいい?

 しばらく僕は彼を倒す方法を思案した。しかし、良い方法がみつかる筈もなく諦めて入ってきた元の扉に帰ろうとしびの甲冑を着込んでいるときに、はっと気づいた。

そうだ!しびを使えばいいんだ!

 僕は大急ぎで左腰からチューリップハットに入った太陽を取り出し、しびの甲冑を太陽で照らした。甲冑はみるみる本来の太陽の妖精「しび」の姿に戻ってゆく。よしよし。
しびは、太陽の光で元の姿に戻るが、水に浸けると高温を発しながら玉虫色の半月の姿に変わる。そう。「高温を発しながら」である。

 僕は太陽の姿で元の妖精の姿に戻ったしびをシャツでくるんで、岩風呂に投げこんだ。高温を発しながらしびは次々に溶けて玉虫色に輝く甲冑になっていく。風呂の湯は、ぼこぼこを泡を立てて沸騰しはじめた。
「や、やめてくれ!」
 たまらず水色の男が風呂から飛び出してきた。勝った<(^ー^)/

 …水色の男はしばらくタイルの床のうえでのたうちまわっていたが、やっと落ちつくと、僕に向かって、「よくやった。これからいつでも疲れた時はここの風呂に寄ってくれ。きっとお前の疲れは取れるだろう。さぁ、ゆっくり風呂に浸かってくれ」などと言う。
…い、いや、まだお湯沸騰しているから入りたくない(^_^;

「約束の次の扉の場所を教えて欲しい」と僕は彼に扉の場所を尋ねた。男は右手の人差し指を空に向けて、「あの【空鳥】に導いてもらうがいい」と言った。

【空鳥(ソラトリ)】はそこにいた。
大きさは40cmぐらい。紙飛行機に鳥の翼を付けた様な体は、黄金色に輝く金属で出来ていた。高速に飛行し、僕が空鳥に気づいた瞬間にはもう、僕の目の前に一瞬で飛んで来ていた。

 水色の男はもう風呂に帰ったのか姿はなく、僕は空鳥に導かれるままに、入ってきた扉と反対の方向にある細い人工の滝の向こうに足を踏み入れた。

…滝を抜けると、そこはピラミッドの中だった・・・・・・

                − 第6夜 途中 −


…第6夜はあまりに長く、また、ピラミッドに入ってからの話をきちんと思い出せないので、またの機会につづきをお見せしようと思います。今回はここまでです。最後まで読んでいただき、ありがとうございましたm(_)m

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