道程の途中で〜風待ち煙草〜
ずっと歩き続けていると、足が痛くなるし、疲れるよね。上り坂だと、特にそう。 下を向いて一生懸命歩くのにも疲れたし、少し、休もう。 ふと立ち止まり、道ばたの石に腰掛けて、煙草に火をつける。 足下には蒲公英(たんぽぽ)が咲いている。綿毛の白い花が、僕をみていた。 どこにも行けず、じっと土と共に暮らしているのに、踏まれても伸びる強い命。 なぜ、そんなに強く生きていられるんだろう。羨ましいな、ってこぼしたら、 「土が近くて安心するんだ。だから、ここにいるだけ。」 いつか来る風を、ただ待っているだけなんだよ、だってさ。 それぞれが自分で選んだ生き方がある。 そう、きみは上を向くことを選び、僕は前を向くことを選んだだけなんだよね。 しばらくすると、優しい風が吹いてきた。あなたがくれた、「頑張れ」のことば。 走り疲れたら、歩けばいい 僕に必要だったのは、立ち止まって煙草を吸う余裕だったんだね。 風に吹かれているうちに、傷んだ足が癒えてきた。 綿毛が風に吹かれて、僕の道しるべになる。 「じゃ、元気でね。頑張ってね」 うん、頑張るよ。 …今なら、そう言えるかな? |